枯木山・金沢山(茅野

枯木山の名前は山村正光さんの『中央沿線各駅登山』(山と溪谷社)で知った。各駅登山だけに起点は青柳駅だというのだからガイドブックそのままに歩いたら大変な目に遭うが、車道を歩かされる部分はちゃっかりと車を使って10年ほど前に頂上には立った。

しかし車を使うとものの5分しかかからないので、ちょっとそれではなあとずっと頭の中にはわだかまっている山だったのである。ちなみに昭和50年代の登山地図では千代田湖からこの山へは実線の登山道が描かれていて、コースタイムまで入っている。

さて、その経路で登ってみた。道標こそ皆無だが、そこそこの径が残っており、草の勢いの衰えたこの時季では難なく歩けたのであった。どんよりと曇っていた空は、歩きだすころには青くなって、ところどころからは枝越しに雲海の八ヶ岳や北アルプスまで見えたのだから上出来だった。

枯木山(点名・川西山)だけでは短すぎるので、車で芝平峠まで進み、その南の1602.9m三角点にも行ってみることにした(点名・金沢山)。古い作業道が縦横にあって、それらや鹿道を拾い拾い登った。これがまたいい山で、健康登山そのもの。ますます無風快晴の広い頂上で長く休んだ。

入笠山は本峰近辺のみはにぎやかなのに、ちょっとはずすと、人外境とは大げさだが、まず歩く人がいないようなところがたくさんある。新緑のころもいいだろうなあと、その頃にもまた訪れたくなった。

帰りは池の平を見に行ったあと、御所平峠を越える展望ドライブとなった。富士見からは規制がかかる車道も、杖突峠からなら規制はないのは不思議だが、その手を使えばいつでも大展望ドライブが楽しめるのである。


陣馬形山(伊那大島・赤穂)

ほぼ10年来続いている大鹿村山行は、定宿延齢草に泊まることが主目的とはいうものの、天気がいいのに山歩きなしではやはり画龍点睛を欠く。今回は横浜YYグループが大挙して初参加することになったので、早々と満席になった。10年も通っていればめぼしい山は枯渇するが、初めての方々が多いのなら定番の山でもよかろうと、行きがけには陣馬形山に登っていくことにした。

頂上まで車で行ける山を歩いて登る人は少ないから、いつでも登山道が静かなのは何よりだし、その登山道が滅多にないくらい歩きやすい径なのがまたすばらしい。降り積もった葉で地面もあくまでやわらかい。

頂上公園では新たにトイレが建設中だった。木道も新設されていたりして、観光資源としてかなり投資がされているらしい。頂上まで来たら突然人だらけというのも考え物ではあるが、まあ、この展望なら致し方あるまい。中南アルプスとも頂稜にはやや雲がかかっていたが、長く休んでいるうちにはところどころのピークが現れたりもした。

いい径は下りが早い。難なく下って麓の風呂に浸かったあと大鹿村へ直行、暗くなる寸前に宿に着いた。そして毎度のごちそうを堪能しつつ、オーナー夫婦もまじえて山宿の夜は楽しく更けていった。
入野谷山・北笹山(市野瀬)

すばらしい快晴の朝になった。宿の窓からは、小渋川を隔てた青田山の頂上から下に向かって刻々と明るくなっていくのが見える。その奥に見えているのは南アルプスの大沢岳である。

健康登山はのんびりゆっくりで、朝食は8時。朝からこんなに食べていいのかしらというくらいごちそうが出るので、さらに出発は遅くなる。小渋川のほとりから朝の赤石岳を見たのちは新装なった道の駅で早くもお土産の買い出し、山へ向かうのはそのあとという珍しいパターンである。

登ることにしたのは帰りがけの駄賃というにはもったいない入野谷山、目指すピークは我々が北笹山と呼んでいる、その南のピークである。延齢草の佐藤さんも仕事を休んで同行してくれることになった。

初めて登って以来、大のお気に入りになって、私はほぼ毎年登っている。主稜線東側のおだやかに起伏する地形と樹林の良さには、いつでもうっとりしてしまう。新緑と紅葉には訪れたことがあるが、葉の落ち切った時季は初めてで、林の明るさにもまた打たれた。

入野谷山は以前は地形図に山名がなかったのが今では記入され、地元としても観光資源としたいのだろうと思う。ま、都会からは離れた山でアプローチが大変だからさほど大賑わいになることもあるまいが、人気が落ち目の分杭峠のてこ入れ策ににゼロ磁場の山なんて言い出せば物好きが大挙して押しかけないとも限らないから、そうならないことを祈るのみである。

晩秋というよりは初冬だった。霜柱を踏んで登る。やはり白眉なのは入野谷山から北笹山間の稜線である。右に中央アルプス、左に南アルプスを望む、実に贅沢な稜線歩きだった。そして北笹山からの大展望、とおく北アルプスまでが一望できた。

この上ない快晴だった。長く休んだのち、なお後ろ髪をひかれる思いで頂上をあとにした。

片山大周回(甲府北部)

去年の11月には片山の紅葉がすばらしくて同じ週に3回も通った。そのほかの季節にも、きつい山登りをしたくない人とちょっと歩くのにいいからざっと数えてこれまでに10回以上はこの山上公園を散歩している。樹林がよく展望がよいという、なかなか得がたい魅力があって、それなのに人でにぎわうこともまずないのだから実に好ましい。

さて、今年は台風で木々がもまれたから紅葉は良くないだろうと想像はしていたが、その通り昨年ほどのことはなかった。しかしそれでもところどころでは目が覚めるような色が見られたし、黄葉のほうはそこそこの色だったのである。

「片山大周回」と銘打ったように、昨日の木曜山行ではなるたけ片山の隅から隅まで巡ってみようとルートを設定した。健康の森の道を歩くだけでなく、道のないところも歩いてみようというのがミソで、それは昨年、大宮山の麓に白砂青松の場所があることを偶然見つけたから思いついたルートであった。歩道をたどるだけではそこにはたどり着けない。

台風による被害は相当なものだったらしい。歩道のところどころで、倒れて輪切りにされた木が積み上げてあったし、倒れても歩道にかからない木はそのまま放置されていた。途中で折れているというよりは根こそぎ倒れている木が多い。頂上のキャンプ場は立ち入り禁止になっていたが、どうしてもそこを通らねば思ったルートを歩けないから入ってみると、炊事施設の屋根に大木がのしかかり、桜の古木が根こそぎ倒れていた。

道のない尾根に入ると倒木がおびただしかった。それを乗り越え乗り越え、最後は少々急な斜面をズルズルと下ると目指す白砂青松の場所に出た。近くの白山、淡雪山といった感じのところだが、それらと違って訪れる人はほとんどいないようだ。人の足跡はいっさいなく、鹿の足跡が多くあった。ちょうど昼時となって、甲斐駒や羅漢寺山塊の展望を楽しみながら休んだ。

休憩後、片山北側の外周コースをなるたけ遠回りになるように片山まで歩いたが、道に落葉が敷き詰められて美しい。山の北側の樹林はしっとりしてこれもよい。こんな散歩道を誰も歩いていないなんてもったいないことである。

山の北側から片山の西端に回り込むと陽が射しこんで一気に明るくなる。その陽が入った西の平のモミジはやはりすばらしかった。参加のSさんが、京都くんだりまで出かけなくとも、ここで紅葉は充分に楽しめますね、と言ったが、人がいないだけでも京都よりいいし、古寺はなくともここからは富士や南アルプスの展望がある。こんな贅沢はないが、あまり喧伝するのはやめておこう。

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