御神楽岩(八ヶ岳お中道)(八ヶ岳西部・小淵沢・八ヶ岳東部・谷戸)

この週は木曜日が本業で忙しいので秋分の日に実施した木曜山行であった。飛び石とはいえ連休なので宿泊客があったら早出ができない。そこでロッジから近い御神楽岩展望台を目的地にした。

思えば前年のちょうど今頃、せっせと八ヶ岳お中道を歩いて地図作りをしていたのだった。御神楽岩もそれ以来一年ぶりとなる。
http://yamatabi.info/otyudo.html

おとみ山のSNSでの友人、松江のSさんとそのまた友人Iさんが、これ以上ないという快晴に恵まれた鳳凰三山を縦走したあとロッジにお泊りになり、そのままこの御神楽岩山行に参加することになった。お彼岸ということで当のおとみ山や地元の面々は墓参りなどで参加できなかったが、同じSNSでの仲間、塩山のFさんがそれに加わった。顔を合わせるのは初めてだとか。

今年にしては珍しく好天続いて、やや黄色味を帯びた初秋の林をのんびりと歩いた。トレラン風情の3人と行き会っただけの静かな山道だった。御神楽岩では鳳凰三山も眺められ、昨日はあの稜線を歩いていたのだと、Sさんたちは感慨深げであった。

錦秋に歩こうと思いつつ、去年は果たせなかったが、今年はなんとか実現させたいと思う。さぞすばらしいことだろうと予感させる豊かな樹林の径である。

小川山(瑞牆山・金峰山)

この年後半の木曜山行の計画は主に常連参加者のリクエストによるが、小川山もそのひとつであった。木曜山行では小川山にこれまでに2回登っていて、いずれも富士見平からの往復だったので、変化をつけるために廻り目平側から登る計画にした。帰りは八丁平に下って、西股沢沿いに戻るというロングコースである。

天気予報はさほど良くなかった。大泉を出るときはあたりは朝霧で、予報どおりの1日となるかと思われたが、野辺山で峠を越えると青空が拡がりはじめた。こんなことがよくあって、清里というところはどうも雲がかかりやすい地形にあるように思われる。

廻り目平の駐車場に着くころには秋晴れになった。ここで東京からの鉄人M夫妻と合流、東京を4時半に出てきたそうだ。遠路来てもらった甲斐のある好天到来にこちらもほっとする。

小川山というと、屋根岩を含めた廻り目平付近の岩峰群を指すのが昨今の常識で、岩にしか興味のない連中には、その先にある、樹林に覆われた、大きいが愚鈍ともいえる山頂など目には入らないだろう。金峰、瑞牆という超人気の山のそばにありながら、というよりそばにあるせいで、一般登山者にも後回しにされている山である。人はいったいにわかりやすい山を好む。もっとも山梨百名山に選ばれているおかげで、多少は日の目を見たところはある。

廻り目平からの登路は明るい岩峰群を縫って登るせいで、のっけから急登ではあるが、ところどころで展望は楽しめる。カモシカ歩道を分けた先の岩場でまず展望のための休憩をし、その先、Mさんに教えてもらった弘法岩へ藪を分けて登り、しばし大展望を楽しんだ。一見針葉樹に覆われて緑一色かと思われる小川山も、広葉樹がかなり混じっていて、その黄葉が美しい。

弘法岩を過ぎるとひたすら樹林帯の登りとなる。しゃくなげが張り出して通過しにくい径もところどころあるが、地面が柔らかいのはなによりで、これは人けの少ない山の美点である。

ほぼ正午に頂上に着いたが、昼休みをするには愛想のないところなので、少し下った展望所(ここは知らない人には行くのはむずかしい)で昼休みとした。

正面に見える金峰山には雲がまとわりついて、五丈岩は一瞬しか姿を見せなかったが、それでもこれだけ見えていれば上出来である。奥秩父東部はかなり見渡すことができた。

そして長い下りで八丁平に着いた。ここから西股沢の林道出合まで予想以上に時間がかかり、そこからの林道歩きがまた長かった。歩いている間中、誰ひとり出会わなかったのは木曜山行ではいつものことだが、金峰山帰りの人もまったくいなかったのは不思議だった。

黒金山(川浦・金峰山)

木曜山行で黒金山に登ったのは2007年の9月のことだから、7年ぶりになる。そのときは乾徳山と合わせて登ったのだが、乾徳山だけでもハイキングでは厳しい部類に入るのだから、さらに黒金山へ縦走するとなればなかなかの長丁場で、最近の参加者の年齢を考えると、再びその行程で黒金山に登るという計画は頭に浮かんでこなかった。黒金山に登る一般的な登路は他に青笹からや西沢溪谷からのものがあるが、これらも相当なものである。

ところが塩山のFさんから、大平の奥へと続く林道に分け入れば、青笹からの登路を半分にして登れることを聞き、なるほどそれなら簡単だとその気になった。Fさんはそれで実際に登ってきたという。私は大平から奥へと林道が延びていることは知っていたが、それに一般車が入れることを知らなかったのである。

しばらく続くという好天の予報は前日になって怪しくなり、午後には雨すら降るかもしれないという予報に変わっていた。勝沼駅で東京組と合流したときには小楢山はすっきりと姿が見えていたが、乾徳山の頂上は雲の中で、つまり1800m以上は雲の中といった具合だった。

だが雲はわりと薄い感じで、さらに上に登れば雲の上に出るかもしれないと期待して大平への車道を登って行った。この車道で標高差700mを稼ぐわけだが、体力は要らないにしろ運転に神経を使う道ではある。

青笹から登ってくる尾根を林道が分断するところは広場になっていて、東に笛吹川の谷を隔てて倉掛山が大きい、三窪のむこうには大菩薩が頭を出し、多摩水源の山々も見える。

思ったよりはずっと踏まれている登山道だった。一度は皆伐されたのだろう山腹は笹原が多く、明るい森が育っている。カエデが多いのは意外で、それが半分赤くなって美しい。そんなところではまるで遊歩道を歩くがごとくである。

牛首の山腹をからむようになるとシラビソの森となり、やがて再び笹原の牛首のタルへ着いた。南側は霧が深いが北の空が青く透けて見える。おそらく頂上では展望が開けるだろうと思ったがそのとおりになった。

頂上北側の岩塊斜面は、この山域にあっては珍しい展望地で、ここで展望が得られなければがっかりするところ。しかしその点に関しては満点に近い展望となった。大弛以東の奥秩父主稜がずらりと並ぶ。北奥千丈岳の南稜に五丈岩がちょこんと見えているのがご愛嬌だ。

誰もいない静かな頂上でにぎやかに長い昼休みをした。


雨乞岳(小淵沢・甲斐駒ヶ岳)

鳥原から雨乞岳への登路はかなり忍従を強いられる径で、初めてそれをたどったのはまだ若いころだったが、それでも途中で嫌になってしまった記憶がある。昔の木曳道を利用するその径は、変化のないことにいい加減飽きてきたころ、やっと中間点のホクギの平へ着く。そこで初めて姿を現した頂上はまだ遥か遠くに見えた。

平久保池から雨乞岳方面に延びる遊歩道にはいまだに全体を把握できるような案内板がひとつもないが、歩道ができてまだあまりたたないころ、いったいどこまで続いているのだろうと歩いてみたことがある。嫌になるくらい延々と上へと続く歩道は、ほとんど標高差300mを登ってやっと終点になった。この間、まったく何の案内もないのだから、最後まで歩く人はめったにないだろうと思われた。

終点からスズタケの藪の中に細々とした踏跡があり、点々と赤テープのマーキングがあるのが見えた。なるほど、おそらくこのまま雨乞岳に登ることができるのだろう、いつかここから登ってみたいと思っていたが、それからほどなく北杜市でこのルートを整備したという話を聞いた。

それではこの新登山道で雨乞岳に登ってみようと木曜山行で計画したのが6年前の秋のことで、その径の良さに感激して、担当しているガイドブックの山が改訂で、いくつかの山を差し替えることにしたとき、荒倉山を落としてこの山を入れたのであった。

木曜山行で登るのはそれ以来である。藤沢から来る初参加のTさんがどんなに早い列車でも9時に長坂だというので、少々遅い出発となったが、それが結果的にちょうどよかった。

というのも、日中は晴れるとの予報にもかかわらず、いつまでも上空を覆っていた雲が昼過ぎに頂上に着くころになってようやくなくなり始めたからであった。頂上で休むうちには雲の中からうっすらと白くなった甲斐駒が現れ、やがて鳳凰山も現れ、眼下に日向山も現れ、ついには雲海に初冠雪の富士も頭を出した。

これでは長居をせざるをえない。1時間以上も四囲の風景の変化を楽しんで、それでもまだ頂上に留まりたい気分だったが、そういうわけにもいかず下山とした。

途中の樹林は今しも秋の絢爛で、午前とは違う午後の光の中、うっとりとした気分で下った。北杜市が誇るべき、出色の味わいをもつ登山道である。

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