大明神山(茅ヶ岳)

大雪で3週間ぶりの木曜山行となった。3月一杯は計画はその都度立てようと思って、昨日はこの1月に歩いてすっかり気に入った大明神山とした。

たいした雪も降らず、しかも日当たりが良くて融けるのも早い茅ヶ岳南麓では、降雪直後でもなければスノーシューの出番はほとんどないが、百年に一度の大雪ともなればそれから3週間近くたってもスノーシュー遊びが楽しめると思ったのである。大明神山なら標高差もなく行程も短いので軽い雪遊びにはぴったりだし、急な防火線の下りは雪があったほうが数倍も足が楽である。

スノーシューはパウダースノーが気持ちがいいが、これは文字通り気分的なもの。ふかふかの雪は下りはいいが登りはスノーシューがあってもやはり辛い。実はスノーシューなどお荷物に過ぎないことはかなりある。人出のある山ではせっかく持って行ったので必要もないのに履いていることが多い。入笠山などではそれが普通である。

本当に威力を発揮するのは表面が少しクラストして、数歩ごとに踏み抜いてしまうような雪の状態のときで、これはスノーシューを履いていればスタスタと歩ける。昨日はそんな状態で、雪がなければ藪で歩けないような落葉松林の中も突っ切ってショートカットもできた。

それにしても収穫はその展望で、前日の雪が普段は白くない茅ヶ岳まで真っ白にしていた。曲岳から黒富士にかけての山々も今まで見たこともないような白さである。これだけ白いのは樹林に付いた雪が融けていないからだが、そんな、とても3月とは思えない寒さだけのことはあって稜線では冷たい風に吹かれ、落ち着いて眺めを楽しみながら休んでいるわけにはいかなかった。

防火線を雪がないときの数倍のスピードで下り、3時間あまりの短い山歩きを終えた。ここでスノーシュー遊びが出来るのは今年だけかもしれないことを思えば貴重な経験だったと言えるかもしれない。


カボッチョ(霧ヶ峰・南大塩)

この週の月曜日にカボッチョに行った帰り、茅野市北山の立ち寄り湯で、例の大雪がこのあたりではどうだったかと聞いたら、あの山梨県中が埋もれてしまった雪はこのあたりでは大したことはなく、むしろその前週の方が積もったという。

なるほどそう言われて見れば、富士見町や原村の道路脇にはたっぷりと雪が残っているというのに、そのあたりにはほとんどなく、付近のビニールハウスも雪の重みで屋根が抜けた形跡もない。

つまりは、普段なら積雪の多いところには降らず、少ないところには降ったのが今度の雪の特徴だったわけで、これは今日大門峠を越えて長和町へ下ったときにも感じたことだった。

普通なら峠を北側に越えると積雪量が増すものだが、今年に限ってはそれはなかった。カボッチョや車山がこの積雪なのだから、目指す大出山はかなりのものだろうと思ったのが、鷹山のスキー場あたりでも例年よりさして雪が多いとも思えなかった。

それでちょっとがっかりしたせいもあったが、なにしろ下界では冷たい雨でもここまで来れば雪だろうとの目論見が見事にはずれ、登山口に着いても相変わらずの冷たい雨のままである。これではどうしようもないと、山は諦めてビーナスラインの雪でもドライブがてら見物して帰ることにしましょうと引き返すことにした。

それでも富士見台の駐車場まで来たら、なんとか歩けなくもないほどのみぞれなので、せっかくここまで来たのだからカボッチョでも登ってみましょうかとなった。

ところがまたアクシデント発生、さて用意をしようとトランクを開けたらなんと靴がない。乾かしたまま持ってくるのを忘れたのである。いつぞやも靴を忘れてサンダルで登ったことがあったが、それと同じサンダルを履いては来ているものの、さすがにサンダルにスノーシューというわけにもいかない。

どうせ展望はゼロだし、これは行くなという神の思し召しかと諦めかけたが、ふと見ると、山歩大介さんが履いてきた運動靴がある。25センチだというので駄目かと思ったが、シンデレラの姉のように無理やりねじ込んだら27センチの足が入ってしまった。

こうして今月三度目のカボッチョと相成ったのである。後世の人は私をドン・カボッチョと呼ぶであろう。真っ白な地面に真っ白な空、右も左もわからない。五里霧中とはこのことだが、カボッチョの主、ドン・カボッチョは運動靴の中に容赦なく侵入する水をものともせず突き進み、見事登頂に成功したのであった。

幻想的といえば幻想的な光景である。晴れていればとてもこんな風景は見られまいと負け惜しみ気味の気炎だけはあがったのであった。

大出山(霧ヶ峰・和田)

3月の終わりになってもスノーシューで遊べるのは今年ならではで、選んだのは大出山、新雪にはばまれたり悪天で中止したりで、去年から4度目の挑戦となる。先週も登山口までは来たものの、カボッチョに変更したばかりである。

ついに好機到来という天気予報が前日になって悪化、登山口の林道入口に着いても先週同様の霧であった。しかし少なくとも雨はなさそうなので出発する。

星糞峠まではかなり地肌の出たところもあったが、峠から北側に進むと完全な雪道となった。むろん人の足あとなど皆無で、おそらくこの冬の入山者は我々が初めてであろう。

ところどころ踏み抜きはするものの、去年の1月、新雪のラッセルに苦しめられたときの半分の時間で林道終点に達した。去年は林道終点から広い雪原に出たところで股まで埋まる積雪にこれ以上は無理と降参したのだったが、むろん今年の雪の量はそれを上回ってはいるものの、春近い雪にはスノーシューが威力を発揮した。

このあたりから大出山の南稜に乗るまで、霧さえなければさほどでもないが、見通しがきかないとあっては難しいところである。

霧さえなければさほでもないというのは、大出山の頂上と、大出山南稜の鞍部には巨大な送電鉄塔が建っているからで、これ以上のランドマークはないからである。

磁石を頼りに白い世界を進む。そろそろこのあたりに鞍部の鉄塔があるだろうという地点まで来ると、忽然とその鉄塔が現れた。数メートルまでの近さに達して初めて見えた霧の深さである。

ここに達しさえすればあとは雪の林道を進むのみである。頂上の南側は広く、白樺の純林もあってなかなか雰囲気のいいところで、新緑のころにでも来ればすばらしいだろう。しかし、今は雪に埋もれた林道がすっかり現れるわけだから、実際には来てみなければわからない。

頂上は林道終点からわずかである。おととしの5月に北側から登ったので、これで南北から登頂を果たしたわけである。鉄塔建設のおまけだったのだろう、実に場違いな立派な東屋がある。いったい年間何人がこの東屋を利用するだろう。

頂上で休むうちには霧が晴れ始め、あたりの山々や北麓の集落も見えるようになった。往路は終始霧の中を歩いたので、復路はそこそこの展望を楽しむことができたのは幸いであった。

貫ヶ岳(篠井山)

最近は木曜日の天気のめぐり合わせが悪い。昨日も怪しい空模様の中出発したが、高速道路に乗るころには早くも雨滴がガラスに当たり始めた。

貫ヶ岳はリクエストによるものだったのでこの2月の計画に入れたのだったが、大雪で中止になった。そこで昨日にもう一度計画したのだったが、ヒルの多い山ではこの時期を逃すと、もう次の冬まで登る気にはなれない。そこで少々の雨くらいなら登るつもりで出かけることにしたのであった。実際、昨日ですらふたりがヒルに血を吸われたのである。

富士川沿いの桜はほぼ満開だが、あの大雪で枝の折れた木が多い。桜見物のドライブで終るかもという雨脚になったりもしたが、登山口に着くとさほどでもなくなった。ここまで片道100キロの遠征ともなれば多少の雨でも登らざるをえない。

久しぶりの、最初から雨具をつけての出発となった。風がないので傘をさして歩けるのは暑がりにはありがたい。茶畑を歩いて杉の暗い林の登山道に入った。県北から来た身には植生が南国を感じさせる。

登山道入口には貼紙があって、私のガイドブックに紹介してある、平治の段から中沢峠を経て下る径は立入禁止になっているらしい。もともと峠からの沢沿いの径ははっきりしていないところもあったので、念のためにということであろう。最近歩いた人の話では崩壊があったりするわけではないそうだ。

おびただしい倒木が登山道をふさいでいるところもあって、まだまだ整備が追いついていないようだ。登るにつれて倒木が減るのは標高の低いところほど雪が重かったせいだろう。

頂上稜線に近づくと雨はほとんどやんだ。頂上でも降られることもなく昼休みができたのは幸いだった。

天気が良ければ調査を兼ねて中沢峠に下りたかったのだが、この天気では気勢もあがらない。さっさと往路を下って、余った時間で白鳥山に車で上がり、山梨百名山2座の合わせ技で一本とした。

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