雨引山(大町南部)

おとみ山が長年乗った車をそろそろ買い替えようかというので、前回の木曜山行のとき、たまたた私が知っていた中古車の情報を話した。

それが昨日までの1週間であれよあれよと商談成立、名義変更も済まぬというのに車が先に手元に到着してしまったのだからそのスピードには驚くばかり、ならばよし、ちょうど絶好のドライブ日和にもなったことだし人数も乗用車にぴったりの4人である。春の安曇野へとあたらしい車を駆って繰り出すことにしたのであった。

その車というのが世界の名車、スリーポインテッドスター、メルセデス・ベンツである。私が運転していったが、こういう車に乗ると、自分の10人乗りワゴンが嫌になる。高速道路をそこのけそこのけと走ったと言いたいところだが、同じベンツでもその手の下品なベンツではありません。

それはさておき、3回目の雨引山だったが、天気はこれまでで最高であった。お目当てのイワウチワも咲いていた。もっともこれは群落の規模が小さくなっているように感じられた。

前回はイワウチワもさることながら、山を銀色に染めたタムシバの花が見事だった。しかしそれが見られたのはおそらく数年に一度の幸運だったのだと思う。今回はまったくといっていいほど花は見られず、咲いていたと思われる木も、ここのところの低温で黒く変色した花を根本に落としていた。

頂上には誰もいなかった。西側の落葉松が邪魔だが、まずまず展望の山頂といってよかろうと思う。雨飾山から妙高山にかけての山々がずらりと並んでいるのが見られたのはうれしかった。1時間あまりを山の同定をしながら過ごした。

帰りは途中から違う径を歩いて戻るのが常で、今回もそうしたのだが、下山路としてあった径が伐採のせいかわかりづらくなっており、藪をこぐ始末になった。まあ、それもごくわずかな時間で林道に出ればあとはそれをぶらぶらと降るのみで、午後早いうちに出発点に戻った。


横岩(茅ヶ岳)

今回の木曜山行、須玉の秘峰シリーズは横岩(▲1395.1)を選んだ。

地形図を見ているとやはり三角点のある山は目に付くもので、もう10年前、長窪峠から西に降り、この三角点を目指したことがあったが、当時の2万5000分の1地形図には樫山から小森川林道に通じる林道がすでにあったにもかかわらずまだ記載されておらず、突然現れたその林道に惑わされて取り付き点がわからないまま戻ったことがあった。

何のことはない、林道が記載された新しい地形図を見ると、その林道に車で入りさえすれば山登りともいえないほどの簡単な山で、いずれ何かのついででもあれば行こうと思いながら10年もたってしまったわけである。

横に長く岩をめぐらした山であることは地形図の岩記号からもわかるが、西側から見ると、艫岩の下から眺める荒船山をミニチュアにしたような印象がある。その岩場は岩登りのゲレンデとして最近有名で、誰が名付けたか「甲府幕岩」という名前が使われているのだが、名付けるなら「須玉横岩」か、今の行政区分なら「北杜横岩」とでもするのが正しい。岩にしか興味のない連中には車からものの5分で岩場の基部まで行けるのだからもってこいということであろう。

先々月、グーグルの航空写真を見ていて横岩の西麓を流れる小森川にダム湖があるのを発見し、それを見に行った話をこの掲示板に書いた。横岩ノ池と勝手に命名した。

どうせ横岩に登るのなら車道からインスタントにてっぺんを踏むだけではつまらない。この横岩ノ池から登るのが一番登り甲斐もあるし興味深くもある。4月末から小森川林道が車で通れるようになったので、舗装路を長々と歩くこともない。

地形図からはそれこそ岩登りでもしなければ横岩ノ池からは頂稜に登れそうもないように見えるが、面白いことに、これしかなかろうという尾根がうまい具合に岩場がごくわずかに途切れた部分にピンポイントでつながるのである。

そうやって登り着いた横岩の頂稜はなんとも美しいところで、ミズナラの多い林は芽吹きにはまだ早いが、今はミツバツツジの花がところどころで揺れていた。冷え込んでくっきりとした南アルプスや八ヶ岳がところどころから眺められた。ゴミや目印の類はひとつもない。ゆるく登ってたどり着いた三角点は深く積もった落ち葉の中にぽつんとあった。

ミズナラが芽吹いた頃、そして秋にもまた来たいと思った。私の好きな山のリストに特待生で仲間入りしたのである。


茶臼の大滝から三ツ峠山(河口湖東部)

麓の大学のワンダーフォーゲル部にいたから、三ツ峠にはよく登った、もっとも、私は1年ちょっとで退部したのでたいした回数ではない。4年間在部した人は数十回は登ったことだろう。それでもその後も三ツ峠のそばにずっと住んでいたこともあって、少なくとも20回くらいは登っているのではないだろうか。

たまには登りたいと思う山だが、もう頂上へ普通の登路で登るのではおもしろくない。そこで10数年ぶりで茶臼の大滝を経て登ることを思いついたのが昨日の木曜山行の計画になった。前回、茶臼の大滝に行ったときはひょんなことから幻の滝騒ぎとなり、新聞には出るは全国ニュースにまで流れるはとなった。そのことはhttp://yamatabi.info/suiunzan.htmに書いてある。ちなみにこの文章に出てくるクロという犬はクリオのことで、当時はそう呼んでいた。なお、ここに出てくる水雲山の芳名録はずっと私が保管していたが、私が持っていてもしかたがないので、三ツ峠山荘の中村さんに託した。

さてそれだけ時間がたっていれば記憶も薄い。新しい堰堤もできていたりしてルートの取り方もおのずと変化していた。我々は最初から沢の右岸のケモノ道をたどったが、一般の登山道をかなり登ってから沢へ入るのがずっと簡単だったとあとでわかった。

茶臼の大滝付近の岩にはアイゼンでつけられた傷が多くあったので今では氷瀑登りをする人があるのだろう。朝は逆光になってうまく写真が撮れなかったが、そのせいで岩が黒光りして迫力はあった。

前回は滝のすぐそばを高巻いているようだが、今回は岩を避けて大きく高巻いた。若い頃の記憶なんてあてにならないもので、滝の上に出ればあとは稜線まで簡単だったように思っていたが、その後も急登が続いてしぼられた。その上方向が少しづつずれて、御巣鷹山と開運山の途中に出るつもりが、御巣鷹山の西に出てしまった。

せっかくここまで来たので四季楽園のほうまで行ってみるが、もう面倒なので開運山はパス。富士はすこし薄いがなかなか立派に見えていた。それにしてもこの高みにいるというのに暑いことで、下界の暑さがしのばれた。

下りは御巣鷹山と茶臼山の途中から金ヶ窪沢の北側の尾根をぐんぐんと下って登山口に戻った。これは一般道を下るよりずっと膝が楽でおすすめである。

浜立尾根から滝子山 (笹子)

滝子山には何度も登ったが、季節は秋から冬にかけてのみ、ルートは南稜を登ってずみ沢を下るというワンパターンだった。樹林に魅力がある山だというのに新緑に歩いたことがないのは不思議なくらいで、Tさんから滝子山のリクエストがあったとき、これはぜひ新緑の時季にして、ルートも少し工夫を加えたいと思った。

そこで浜立尾根を登ることにした。道証地蔵まで車が入る現在、標高差的にはもっとも簡単に滝子山を周遊できるコースとなる。以前からずみ沢を下ってきたとき、これが浜立尾根の入口だなと横目に見ながら通過してきたが、やっとそれを登ることになったのである。

インターネットで少し下調べしたが、浜立尾根は下った記録ばかりが多いのは不可解で、こういった尾根は登るのが易しく、下りはずみ沢経由のように迂回ではあっても傾斜がゆるいほうが易しい。

地形図どおりの急な尾根だったがその分勝負は早い。道標はひとつもないものの、径といってもいいような踏跡が続いていた。南稜と同様にミズナラ主体の広葉樹の新緑は中腹で圧巻となった。浜立山直下では岩尾根となるが、南稜ほどの険しさはない。

浜立山の手前で頂稜に出ると北側は植林の落葉松となるので自然林の良さは少々失われる。頂上では先着のふたりが休んでいた。まだ昼には早い時間だったし、午後にわか雨という予報を考慮して、短い滞在で下ることにし、広々した防火帯まで下ってから昼食とした。大谷ヶ丸がすばらしく立派に見える。

防火帯が終るころからずみ沢沿いの径にかけて新緑がふたたび圧巻となり歓声しきりであった。登山口に無事帰り着いたのはまだ2時半、3時頃には雨が降り出したので、実に幸運であった。

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