行人山(若神子)

私の誕生日がちょうど年度末にあたるため、ちょうどいい節目だということで、その時期に山中で飲み会をするのがほぼ毎年の恒例となっている。そこで、木曜山行を中止した分をそちらに振って辻褄を合わせることにしたのであった。

突然のことでどれだけ人が集まるかと思ったが、結局10人と2匹の大所帯となった。私と同じ生年月の中村好至恵さんも加わって、よりおめでたい。

今年の会場は行人山にした。これなら大して歩くこともないし、少々酒が入っても下りに危険なところもない。何より誰も登ってきそうもないことが重要だが、これもまず大丈夫であろう。山は貸切に限る。

行人山の頂上には石祠が2基あって、そのひとつには石仏がおわすのが面白いところ。これは外から見ているだけではわからない。かつて屋根石を持ち上げて発見したのである。小広い頂上には人工的な地形も見える。行人山というからには、古くは籠り堂でもあったのだろうか。

しかしこの頂上でバーベキューをしたのは有史以来我々が初めてであろう。飲んで食って騒いで3時間近くを過ごした。


春日沢の頭(河口湖西部)

鳥坂峠から春日沢の頭までの稜線の雰囲気は出色ではあるが、車を使わざるをえない場合、その往復ではいささか短いというきらいがある。

稲山ケヤキの森から春日沢の頭へ登るルートがあるのを知ったのは5年前のことで、笛吹市のパンフレットに載っていたのであった。見るとケヤキの森を基点に周回コースがとれ、それなら車で行くにも好都合である。

それでさっそく出かけたのだったが、パンフレットにあった地図がいかにも不備な上に、やっとさがしあてた道標から山に入ると、まったく径がわからないほどひどい草やぶに覆われ、ものの100mも進めなかった。どうも整備して以来、一度も手入れをしていないように思えた。

仏造って魂入れずとはこのことで、すぐに笛吹市に文句をつけた。パンフレットに出ているのにあの状態では誰にも登ることはできないと。

それは初夏のことだったが、その後整備するとの回答を市からもらって、本当に整備されたかと秋に再び訪れたら、すっかりきれいに草が刈ってあった。

そうなればこのルートはすばらしい尾根歩きが楽しめる。すっかり気に入ってそれ以来何度も訪れ、『山梨県の山』が改訂するときに興因寺山と差し替えてこの山を新たに入れたのであった。

今週は黒斑山だったが、リクエストをしてくれたTさんの都合が悪くなって、それならあえて黒斑山にこだわることもあるまいと、おりしも甲府盆地の桃の花が盛りというわけで春日沢の頭を思いついたのだった。本当はその樹林の良さから5月半ばくらいがもっとも美しいルートだと思う。

中央線組と合流した勝沼駅の桜もすばらしく、駅からケヤキの森への道はちょうど桃畑をつらぬく観光コースである。

今年初めて汗らしい汗をかいて西尾根を登った。たどり着いた頂上は、甲府盆地側が伐採されて見晴らしが良くなっていたが、あいにくの春霞であった。もっとも、それがいかにも春の山ではある。

帰りは不粋で見苦しいビニール紐を掃除しながら東尾根を下った。この尾根道は実に雰囲気がいい。ひと月後には緑のトンネルになるだろう。

綱子と舟久保の山を巡る(青野原)

横山さんと打田^一さんに加わって藤野の峰山付近を初めて歩いたのは3月22日で、そのときロッジ山旅掲示板に「横山さんが特にお好きだという天神峠付近の尾根道はなるほど気分のいい場所であった。若葉の出揃った4月半ばくらいならもっと楽しめることだろうと思う」と書いた。

早くもそれを実際に楽しむことになったのは、都合で火曜日に変更した木曜山行を、たまたまその日に横山夫妻が峰山あたりに行くことにしているというので、臨機応変にありがたくその計画に便乗させてもらうことにしたからであった。

たった2週間とちょっとで山の様子はまったく違う。濃淡さまざまの緑が山に揺れてまさしく山が笑っていた。次々に現れる山間の集落ではミツバツツジが今を盛りと咲いている。

今回は、綱子を基点に、前述の天神峠付近の尾根道を歩き、帰りがけの駄賃に舟久保の裏山を案内してもらった。このあたりでは紅葉は12月でも楽しめるという。なるほどそれなら八ヶ岳あたりがとっくに冬めいているとき、少し季節を遡って楽しむこともできるというもの、と、峰山からの縦走コースが頭に浮かんだ。

ワラビやヤブレガサ、ツクシを摘み、花を眺め、もちろん山々の眺めも楽しんだ。何より、やはりその緑、緑。あまりに突然で他に都合がつく人がいなかったのがいかにも残念な1日であった。

高柄山 (大室山・上野原)

20年近く前の年の暮れ、おそろしく寒い日に四方津駅から高柄山に登って上野原駅へ下った。高柄山に登ったのはその1回だけだった。寒かった以外の記憶といえば、やたらとコブを上下したことと、頂上からいったん下ったあと、ゴルフ場のせいでできた迂回路で鶴島御前山の頂上近くまで再び登らされ、それが登り降りともにすこぶる急な径で閉口したことだった。

要するに高柄山にはあまりいい印象を持っていなかったことが20年も再訪しなかった理由であった。もちろん、車で行くには面倒だったこともある。

去年、高柄山の南麓金山からの登山道が整備され、それがこの山への最短ルートだというニュースを見て、それならまた登ってみようかなあと思ったのが昨日の木曜山行の計画になった。地図を見ると金山起点で周遊できそうである。八ヶ岳から行く身には新緑の先取りという意味もあった。

現地へ向かう高速道路からもすばらしい新緑が楽しめた。新緑の中に、おそく咲く山桜の色が混じるのは、絢爛と桜だけが咲いているよりはよほど味わいがあるようにも思う。

金山でたまたま歩いていたご婦人に新登山道を聞くが、その人は詳しくないらしく、他の人に聞いてくれて、そしてわざわざ間違いやすい分岐にまでついてきてくれたのには恐縮した。しかしそれは高柄山の東尾根をたどる旧来の径で、あらかじめ地図上で予想していた、あらたに整備したという径とは違うと思われた。まあしかしそれにしたって初めてなのだから、そのまま登ることにした。

新緑を楽しみながらと言いたいところだが、稜線の登り降りはかなり手ごわく、しかも足もとがすべりやすい砂礫なので気を使った。高い気温に一汗も二汗もかいて昼前に頂上に着いた。ひとり登山者が休んでいて、昨日山中で出会ったのは結局このひとりだけであった。

昼食後、大地峠へ向かって降る。これもいくつものコブを越えていく。まだ舗装も新しい林道に出ると、それをしばらく歩いて、金山峠への尾根道に入った。

ヒノキの植林地と自然林が交互に現れる珍しい尾根道で、地面が柔らかく歩きやすい。金山峠は道標がなければこれがそこだとするには難しい地点である。尾根通しと古福志への径ははっきりしているが、金山へはかぼそい踏跡だけである。しかも降るにつれてそれもなくなった。そうなれば方向をさだめてただ降るしかない。

とんでもない急斜面だが、幸い地面が柔らかいのと木が多いせいでさほど恐怖心はなかった。やれやれといった感じで金山の車道に出たが、こちら側には金山峠をさす道標は見当たらなかった。もしあったとしてもこれを登るのは相当な苦労であろう。

標高から想像していたよりはずっとハードな内容であったが、それだけに帰りがけに寄った秋山温泉の湯がことのほか気持ち良かった。

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