白井平〜御正体山〜山伏峠(御正体山)
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大室山(鳴沢) 申し分のない好天である。空気は澄んで遠い山まで見渡せる。こんな日に展望のない山に登るのはもったいないように思われたが、こればかりは仕方がない。 ことほどさように大室山は樹林こそを楽しむ山である。導入部の青木ヶ原樹海の針葉樹の森、しかし、その中にあって稀少な広葉樹、ヒトツバカエデの黄色の落葉が、普段は黒い道に敷かれて鮮やかだ。先週に引き続いて渡邉さんが同行してくださることになって、このヒトツバカエデの名前も教えてもらったのである。つまり昨日は願ってもない富士山ガイド付きの木曜山行となったのであった。 精進口登山道からそれて大室山の裾に入っていくと画然と地面と森の様相が変わる。あくまで柔らかい地面を踏んで、まったく道のない斜面を適当に登っていく。方向を定めたら高い方に登っていけば頂上に着くのが、こういったコニーデの特徴だが、林床にそれをさまたげる藪がないのがこの山の美点で、ルートの取り方はそれこそ自由自在である。 頂上が近くなると葉の落ちた樹間に御坂の山々が垣間見え、覗き見をするように山座同定を楽しんだ。頂上からは富士山も少し見えるが長居するほどの場所でもないので、少し戻ったところで長い昼休みとした。 下りこそ方向を定めたら一気であった。ぐんぐん下って、その最後で、渡邉さんにミズナラとブナの大木が並んで立っているところを案内してもらった。これがまたすばらしい木で、しばらく眺めていて飽きることがなかった。 |
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瑞牆山展望歩道(瑞牆山) 秋の好日、瑞牆山荘前は平日だというのにすでに車で埋まっていた。その上の大駐車場こそ満杯というわけではなかったが、それでも相当数の車がとまっている。 なるほどこんな日に瑞牆山や金峰山にでも登ったら気分が良かろうと思うが、我々はそれをしないで、すぐ横の目立たぬ山を徘徊しようとするのだからひねくれている。おりしも山麓を埋めた落葉松の黄葉が盛りである。瑞牆山展望歩道に入る前に、芝生広場方面に行って、しばし瑞牆山の撮影会となった。実に見事であった。 魔子の北方に延びる尾根を今年の新緑の頃に調べて、これは秋にもう一度来ようと思ったのが昨日の計画になったわけだが、あいにく紅葉の時期には少し遅すぎたようだ。もっとも、今年はどこの紅葉も色が悪い。 植樹祭のときに整備されたのであろうこの歩道は、そのあとところどころに道標が置かれたものの、それを見て歩いてみようかと思った人があったとしても全体像がわかる地図もないときてはうかつに歩けるものではない。ところがそのおかげで極上の歩道を極上の樹林を味わいながら誰にも会わずに歩けるのだから、我々にとってはもっけの幸いということになる。 整備したころにはもっと展望も開けたのだろうが、それから10年とあっては木も伸びて展望歩道とは名ばかりになりつつある。もっとも、展望を楽しむ山なら他にもあるわけだから、ここはここで樹林を楽しめばいいだけのことである。 それでも、魔子の人穴の展望台では瑞牆山や金峰山のみならず富士や南アルプス方面にもほぼさえぎるもののない展望が得られ、そこで昼の大休止とした。 |
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戸倉山(市野瀬) 毎年の恒例となった感のある大鹿村行きは、中村好至恵さんとそのご友人ふたりの、大鹿が初めての人たちが加わり、総勢6人となった。 初日を戸倉山としたのはもっぱら地理的な理由によるが、少々遅い出発でも登れるということもあった。標高差のわりには径がいいので楽に登れる山である。私は4回目だが秋は初めてであった。 馬止めの松と名づけられた赤松の大木を過ぎると植林地を抜けて、雑木林の山腹を大きくジグザグを切って登るようになる。新緑のときにも美しさに歓声の上がる場所である。紅葉の盛りは過ぎているが、径を埋めた落ち葉にもまだ色が残っているのが美しい。 過去3回、中央アルプスの大観には恵まれなかったが、今回はやっとそれにも恵まれた。西峰の頂上が広く伐採され眺めが良くなっていたのでなおさらであった。東峰も伐採されていたがあいにく南アルプス方面は雲が多かった。仙丈ケ岳に雪が積もれば迫力ある景色が楽しめるだろう。頂上で中村さんが絵筆をとる間、山々の同定に興じたが、遠く槍ヶ岳の穂先も肉眼でみとめられた。 薄暮の大鹿村では小渋川の果てに赤石岳が望めた。その名をとった赤石荘の湯船からは赤石岳が望めないのはあいにくだが、代わって暮れ行く中央アルプスが眺められた。 暗くなってたどり着いた延齢草では毎度のご馳走をいただきながらご主人の佐藤さんをまじえて夜遅くまで歓談は尽きなかった。 |