富士山二ツ塚(印野・須走)

3年連続の二ツ塚である。最初の年は濃霧でひたすら足元の火山砂を見るだけで、たどり着いた二ツ塚の片方のピークも、おそらくここが頂上だろうと想像するしかなかった。

そこでもう一度去年出かけたわけだったが、これが打って変わった好天で、そのうえ6月には珍しい新雪が頂上を真白にして、ちょっとお目にかかれないような光景を見たのであった。それが忘れられなくて今年も計画したのだったが、あいにくの予報で、そのせいか八ヶ岳からの参加者はおとみ山だけである。

予報どおりの厚い雲に覆われた空を見上げる朝だった。臨機応変に行く先を変えることにして出発したが、東に進むと空が明るくなり、大月で横山夫妻と合流して中央道を河口湖へと進むうちには、行く手の富士山はほぼ全容を現していた。富士吉田でさらにおなじみのW女史と合流、御殿場口へ向かう。

前日の気温の高さが続いているのだろう、強い風が吹いているが、それが妙に生温かい。この風おかげであまり汗をかかずにすむというものだが、さすがは富士山の風で、ときおり身体がよろめくほど吹く。遠望はあまりきかないが、目の前の風景だけで充分広いのは富士山ならではであろう。

二ツ塚の低い方のピークでは風のせいでとても休憩できる状態ではなかった。下に見える林の中なら風も止むだろうと火山砂を蹴ってぐんぐん下る。林のあるくぼ地に入るとウソのように風もなくなった。

カラマツやダケカンバの林の中はオアシスのような草地になっていて、林を一歩出れば荒漠とした風景が広がっているとはとても思えない。「いいところだねえ」と横山さんのおなじみの感嘆詞も飛び出して長い昼休みとなった。

二ツ塚ハイキングコースのすばらしいところは、行きと帰りの劇的なほどの雰囲気の違いである。帰りは美しい樹林の中を下るともなく下っていく。再び富士山らしい風景を見たときには、もう目の前は出発点の駐車場であった。

黒斑山と蛇骨岳(車坂峠)

黒斑山、蛇骨岳は去年の秋に計画したが、満員御礼の盛況のはずが雨天で順延にしたら参加者は名古屋のNさんだけになってしまった。たったふたりで歩いたその日がまさしく雲上散歩で、良かった良かったと喧伝したのが効いたのか、今回も満員御礼となった。

梅雨時とあって予報は悪い。直前までやきもきしたが、まあ何とか雨はなさそうだとなった。しかしこの山は浅間本峰が眺められてナンボの山である。

向かう北の空には暗雲垂れ込め不吉な予感がしたが杞憂だった。佐久市内に入ると浅間連山が薄いシルエットで現れ、近づくにつれてはっきりしてきた。

満員の山旅号は青息吐息で標高2000mの車坂峠へ登りつく。あたりでは今年は花が遅かったというレンゲツツジがちょうど満開だった。

外輪山に出る直前までは浅間山本峰(細かいことを言えばここでは前掛山となるのだろうが)が隠されているのがこのコースのいいところで、こういった巧まざる演出はコースの価値を上げる。雲が流れて浅間山の山肌を通り過ぎていくので、すっきり晴れているよりは変化に富んだ風景を楽しむことができた。

頂上のあまり広くない黒斑山ではこちらの人数が多いので長居を遠慮し、すぐに蛇骨岳へと向かった。蛇骨岳の方が場所が広い上に四囲の眺めも広い。

蛇骨岳で昼休みをするうちには南から雲が押し寄せ、浅間山を隠すとともに雨も運んできた。しかし雨脚が強まることもなく、今はほとんど使われていない裏道で車坂峠へと下るあいだには再び青空となった。

石切り場から王ヶ鼻(山辺)

金峰山を中止にしたのは私が膝を痛めたからだったが、それに代わる案として、先週雨天中止とした、石切り場からの王ヶ鼻を選んだ。中止にしてもったいなかったのもさることながら、登り降りにこれほど膝の負担が少ないコースも珍しいからで、つまり傾斜がゆるく地面が柔らかいのである。地面の状態だけは地形図を見ただけではわからない。実際に昨夏に歩いて、その素晴らしさを知ったのであった。

素晴らしいコースなのに人けがほとんどないのは、車で登れる山に歩いて登る物好きが少ないからで、これは私たちにとっては幸いなことである。昨日も降ってきたひとり以外に他の登山者はいなかった。北側から遊歩道で登ってこられる王ヶ鼻にもひとりの観光客の姿もなく、夏本番にはすこし早いからかと思われたが、肝心の北アルプスの展望は真夏らしく湧いた雲の中に隠されたままだった。

それでも逆方向を見渡せばはるか中信高原を車山まで見渡せ、青空に夏雲湧いて、横山さんお決まりの「ああ、いいねえ」の感嘆詞も飛び出すのであった。

日ざしは肌に痛いが、少し木陰に入ればすっと汗も引いていく。石切り場に降る、木舟道と名づけられた道の真ん中に、誰も来ることはあるまいと陣取って、四方山話に過ごす昼のひとときが実に楽しかった。

茶臼山(山辺・和田)

夜半、雨の音で目が覚めた。ここのところ毎日こんな天気で、朝になると止んで、昼間はそこそこの天気となる。今日もそうだろうと出発したが、霧ヶ峰に登るとかなりの雨脚であった。

扉峠からいったん三城方面へ下ると小雨になった。ここまで来ているのだから快方に向かうと信じて登り始めたが、茶臼山西尾根に達するころには再び雨となった。幸い風がなく、そのうえ笹が広く刈り払われているので傘をさして歩ける。

この雨の中では弁当を広げる場所もない、どうしようかと思案しているうちに頂上へ着いたが、着くとほとんど同時にぴたりと雨が止んだのは幸いというしかなかった。その上、背後に槍と常念がズームアップされて現れたのには驚いた。残雪まで多く見えるのは時間をも遡るのであろうか。霧のときには光の屈折が変わってこんな風景が見られることは話には聞いていたが、かの蜃気楼やブロッケン現象と同じ原理かもしれない。あわてて写真を撮った。

今年前半最後の木曜山行で得がたい風景を見た我々は、意気揚々と下り、ロッジに帰って前半の打ち上げをしたのである。

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