最高峰入れ替わる

エベレスト(チョモランマ)が世界最高峰ではなくなったというニュースには驚かされた。精密な再測量の結果、今まで第二の高峰だったK2(チョゴリ)が最高峰になったという。他の8000m超の山にも若干の変動があったようだが、この際、それは些細なことである。

発表したのは、エベレストに初登頂した英国の王立地学研究所だというのだから、相当苦渋を伴ったのではと察せられる。というのも、エベレスト初登頂のニュースがエリザベス女王の戴冠式への実にタイムリーなプレゼントになったのは有名な話だからだ。

K2初登頂はエベレストの翌年、1954年イタリア隊によって成された。世界最高峰初登頂の栄光はイタリアに移ってしまうことになる。イタリアでは祝賀ムードだというが、今さら50年前の、棚からぼた餅のような快挙で喜ぶのもどうかしている。

エベレストが72m下がって8776mに、K2が168m上がって8779mになる。たった3mの違いとはいえ、順位は順位である。エベレストとK2では離れすぎていてお互いを望むことができないから、目測での高低はもちろんわからないが、何度も測量は行われたのだろうに、何で今さらこんなことになるのかと思ってしまう。

もっとも、これだけの巨峰であれば、測量の基準によってビルひとつ分くらいの高さは上下するのかもしれない。ニュース解説には詳しく書かれていたが、無学な私にはちっともわからなかった。

その両方に接する中国はともかく、ネパールは英国の発表を簡単にああそうですかと納得はすまい。なんたってエベレストは外貨獲得の大きな商品である。一方のパキスタンでは、降って湧いたようなチャンスに大騒ぎらしい。

山岳界としても大騒ぎになるだろう。すでに2000人を越えるというエベレスト登頂者たちの立場はいったいどうなるのだろう。存命の人はさぞやがっかりするだろうが、とはいえ、あらたにK2に挑戦することのできる人はそう多くはあるまい。

これからはK2に最高峰を目指す登山者の目が一斉に向けられるのだろうが、もともと難しさはエベレストの比ではないと聞く。登頂者も桁違いに少なければ、成功率も低い。険しさもさることながら、本当はずっと高かった標高が難しさを増していたこともあったはずだ。登山者の増加に比例して遭難は一気に増えるかもしれない。それでも最高峰というのは格別だから、今のエベレストのようにそこら中にハシゴがかけられ、フィックスロープもべたべた張られて、安全度も格段に高まるようになるのだろうか。

まあ、冷静に考えれば地球上の凸凹がたかだか数メートル高かったり低かったりするだけのことに一喜一憂するのもバカバカしい話だとも思うが、それを言い出すと山登りなんてできなくなってしまうよね。