富士下山(富士吉田・須走)

五合目では、青空に頂上までくっきりと見渡せたが、下山するにつれ再び雲の中に入ってしまった。それでも雨具の世話になるほどでもなく、濡れた石畳には少々気をつかったが、むしろしっとりした森の雰囲気を楽しむには好適な湿気だった。数々の朽ちかけた遺構に往時の殷賑を偲ぶだけでもこの道の価値がある。馬返しから、車を置いた中の茶屋までの坦々とした道はすこぶる長かったが、これも富士山ならではだった。
材木尾根(八ヶ岳東部、谷戸)

昼食を終えても霧は晴れなかった。仕方ないかと歩き出したときだった。一気に霧が動き、みるみるうちに周りの景色が現れ始めた。恐ろしく高いところに富士山もお出ましだ。こうなりゃしめたもの。森に覆われた尾根が多い八ヶ岳では、これだけの広い展望をほしいままにしながら下れる砂礫の尾根は他にない。眼前に勢ぞろいする山々の豪華さを思えば、おそらく日本中探してもまたとない第一級の下降路である。
宝永山(富士山、須走)

下から見てもあれだけ目立つ宝永火口を近くで見れば圧倒されるような迫力で、第一火口の底に下れば、なんだか異空間にいるような雰囲気である。さて登ろうよと火口壁を斜上する径を歩き出したが、これが厄介な代物だった。まるで砂走りを逆に登るようなもの、歩みは遅々として進まない。ようやく火口壁の上に出たら、こんどはものすごい風に吹き飛ばされそうになったが、ともかく風にほんろうされながらも宝永山のてっぺんに立った。
ドノコヤ峠(夜叉神峠)

峠道の整備を2005年度に終えたとはいうが、たった2年で、ふたたび廃道といってもいい状態になっていた。ほとんど獣道である。この山域は実に崩れやすい地質で、危ういトラバースも連続する。こういう山に慣れた者でないと難しいだろう。峠を下って、沢沿いに鉱山跡はまずこのあたりに違いないというところまで行ったが、結局、いかにも人工的な平地はあっても、建物の残骸などに行き着くことはできなかった。
御坂峠から大石峠へ(河口湖西部)

ちょうど今頃が紅葉の盛りだろうと設定した御坂縦走だった。下部ではやはり少々早い感じはしたものの、稜線上では黄色に関してはまあまあ楽しむことができた。黒岳の展望台では、ほぼ富士の全容を、そして南アルプスの連嶺もうっすらと望むことができた。いくつもの凸凹を越えてやっとたどり着いた大石峠ではゆっくりしたかったが、富士が隠れてしまった上、すでに夕暮れが迫っていた。そそくさと下ったが、里に着いたのは、はや灯ともし頃であった。
五郎山(居倉)

6月、この頂上から落葉松の新緑のじゅうたんを見て、これが金色に輝くころにまた来ようよという話になった。ねらいは違わず、今まさに落葉松の黄葉の盛りであった。同じ径を下るのもつまらないから、登りと違う尾根を下ったが、そこは落葉松の植林地、風が吹くと針のような葉が雨のように降った。落葉松の林床にはおびただしいシャクナゲがあった。これが花をつけたなら、知られざる大群落だなあと話しながら下った。
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