69.白山    
     1986(昭和61)年8月21~24日

「…… この八月九日~十一日の三日間、白山に登ろうと思っています。これは家族連れ(妻、長男小学六年生、次男一年生、小生)で出かけるのですが、もしよかったらいらっしゃいませんか。何しろ家庭遊山的な登山だから、君にとっては物足りないかもしれませんが。白山は少し辛いから立山に変更するかもしれません。とにかく君が希望でしたら、八日(日曜)中に拙宅までおいで下さい。上野を夜の急行で立てば九日朝金沢に着きます。君の御都合至急御一報下さい。もし豫定変更の場合は電報で、君が発つ前お知らせしますから。……」(原文は旧かな)

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以上の文面は、昭和29(1954)年8月4日の日付で、深田久弥さんが私にくださった手紙の一節である。ご家族揃って白山(あるいは立山)に登るから君もどうかというお誘いだったが、その夏、私は別の山行の予定があって、「せっかくですが」というご返事を書くことになった。今になれば、得がたい機会だったの惜しむばかりである。

と、まぁ、そのような事があってからの32年後、やっと白山に登ることになっての写真が、ここに載せる3枚。 3泊4日で、次のように歩いた。初日は新幹線名古屋からバスで平瀬(民宿泊)。2日目は白水湖登山口までタクシー。ここには白山まで8㌔の道標。7時45分に歩き始めて白山の室堂に12時15分着。山頂付近を一回りして室堂泊。3日目は南竜ヶ馬場、別山、御斜利山と歩いて一之瀬へおりバスで金沢にでた後はビジネスホテル泊。4日目は鈍行列車を乗り継いで帰宅。金沢を9時50分発の列車に乗り、直江津、長野、高崎と乗り換えて、なにしろ時間がかかった。



上 2日目、朝方の霧が晴れると目指す白山が見えてきた。前途程遠し。だが、心躍る眺めだった。

中 別山を見たものだ、と思う。

下 これは別山の頂上へあとわずかというところだ、と思う。 今となれば「と思う」ばかりになってしまい、我れながら困まったものと嘆いています。

(2015.4)

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