52.日留賀岳
   1984(昭和59)年10月23日

関東百山』は浅野孝一、打田鍈一、楠目高明、横山厚夫の共著で、実業之日本社から1985年に出た本である。

それから今年で30年の余、すでに浅野さん、楠目さんは彼岸の人となり、私は速い年月の推移に驚くのだが、この日留賀岳はその『関東百山』の1篇として私が書き、出版前年の秋に登りにいった山である。

標高は1848.8㍍、栃木県は男鹿山塊の1山で、当時はそれほど登山者の多い山ではなかった。私も道がどうなっているか心配で、塩原町の観光課に問合せ、「町の青年団が毎年刈り払いをやっています」を聞いてから出かけていった。

秋のよく晴れた2日間。中塩原温泉の旅館松ノ井荘に宿をとり、初日は温泉街から南に離れた新湯近くの富士山1184㍍で足慣らしをし、2日目は6時の早立ちとした。登山道の破線は白戸という集落からつけられ、その登山口のきわにある小山さんという農家で山の状態を確かめた。すると、五十年配のご主人が道順その他を詳しく教えてくれた。

この山は塩原町では一番高く、オオヤマヅミノミコトとスクナヒコナノミコトを祀って尊ばれ、別に御岳山というとも教えてくれた。そして、いかにも「わが郷土の山」といった愛情のこもった話振りが感じられて、とても微笑ましく思ったのをよく覚えてる。また、帰りに「お蔭様で無事に登ってきました」とお礼に立寄ると、大根を何本もお土産にくれたことも忘れられない。(重くて2本ぐらいで勘弁してもらった)



上 この時は山頂の日留賀岳神社はつぶれていたが、その後、立派に建てなおしたと聞いている。

中 小山さんに聞くと、登り4時間下り3時間の山。深山の趣もあり、登りでのある山だった。眺めもよかった。

下 帰途、温泉街から振返って見る日留賀岳。なにしろ存分に楽しんだ秋の1泊2日の山登り。

(2015.3)

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