山と溪谷社刊の『東京周辺の山350』に書いたガイドです。これは僕が提出したそのままの文章で、例によって書かずもがなの表現が多いため、編集の段階で(面白おかしく書いた部分は)ほとんど削られています。それはそれ、この方を面白がる人もまたいるかもしれません。個人のガイドブックではないので、仕方ありませんね。実物の本をお持ちの方は較べてみるのも面白いかもしれません。川俣川渓谷は本当によいところですから、ぜひお勧めします。
| 川俣川渓谷吐竜の滝から天女山 |
●小海線清里駅→吐竜の滝→八ヶ岳牧場→中止の滝→天女山→甲斐大泉駅 |
| ●歩行4時間・一般向/体★★ 技★ 危★ |
八ヶ岳山麓にもすでに人の手の入らない森林は少ない。川俣川渓谷は観光 |
| 地に隣接していながら、急峻に切れ込んだ地形ゆえ開発を逃れ、その斜面に |
| は素晴らしい自然林が残っている。その森を味わい、牧場の広闊を楽しみ、 |
| とどめに天女様に会いにいこう。(残念ながらほとんど留守) |
コースの特徴 |
川俣川の東沢と西沢をまたいで歩くこのコースは、渓谷も展望もというお |
| 徳用パック。もっとも、この付近は縦横無尽に道があり、さまざまな周遊コー |
| スが可能。何もこのガイドの設定にこだわることはない。これはほんの一例 |
| ぐらいに考えて、要所に地図入りの案内版があるから、その場でコースを考 |
| えてもいい。体★★は紹介コースを全部歩き通した場合。タクシー等の利用 |
| で★になる。技、危の★は、見ての通り。 |
適期 |
渓谷の斜面を被った林を楽しむには、新緑の5月中旬から6月中旬、紅葉 |
| の10月中旬から11月初旬くらいが適期。東沢の渓谷沿いの道はたとえ盛 |
| 夏でも涼しく、牧場もまた夏がよく似合う。冬は展望がいいが、八ヶ岳おろ |
| しの冷たさもまたひとしお。整備された遊歩道であっても、いったん雪が積 |
| もればそれなりの覚悟がいる。特にこのコース中、吐竜の滝から八ヶ岳牧場 |
| に至る急斜面は、積雪時には気軽な散策というわけにはいかない。 |
アドバイス |
マイカーを利用して周遊コースを設定する場合、その起点の駐車場は、まき |
| きば公園、東沢大橋、吐竜の滝入口、天女山入口、清里駅、大泉駅等にある。 |
《コース解説》 |
●清里駅−吐竜の滝(45分→←50分) |
駅から出たら右折し、きらびやかに装いを凝らした色々な店の立ち並ぶ中 |
| を歩く。美し森への道を右に分け、さらに清泉寮への道を右に分け、小海線 |
| に沿って歩いていく。やがて清里有料道路をくぐり、道は川俣川東沢に降り |
| ていく。行く手には赤岳が遥かな高みに頂上を見せているだろう。ほぼ下り |
| 切ったところが吐竜の滝の入口で、大きな駐車スペースがある。道標に従っ |
| て林の中に入り、左側に瀬音を聞きながらものの10分も歩くと、小海線の |
| 高架をくぐる。そのすぐ先で立派すぎる鉄橋で右岸に渡ると、もうそこに吐 |
| 竜の滝がある。この滝は東沢そのものの段差による滝ではない。もともと地 |
| 下水脈だったものが、長い時間を経て川俣川によって浸食された地層に開口 |
| 部をさらし、川に向かって水をほとばしらせたのだろう。堂々たる落差と水 |
| 量というにははばかられるが、苔蒸した岩の間に何条もの白糸を垂らす様に |
| は、今初めて陽光の下に姿を現した水の清潔さがある。 |
●吐竜の滝−八ヶ岳牧場(25分→←20分) |
渓谷探勝路と別れて、八ヶ岳牧場へは西に向かって深い沢からの脱出とな |
| る。なかなかの急登で、一汗かかされるが、そんな地形ゆえ残された貴重な |
| 自然林の絶妙の色合いが新緑や紅葉の時季には目に沁みる。やがて、まるで |
| 地下道の階段から地上に出たように空が突然広くなって八ヶ岳牧場に飛び出 |
| す。目の前に南アルプスの連嶺が覇を競い、八ヶ岳に向かっては緑の斜面が |
| 果てしもなく拡がっているようだ。この牧場に飛び出す一瞬も本コースのハ |
| イライトである。 |
●八ヶ岳牧場−天女山(1時間45分→←1時間30分) |
牧場に出たところに案内板がある。ここでは牧場を東西に横断する。進む |
| にしたがって甲府盆地の果てに富士山が現れ、振り返ると、奥秩父の盟主金 |
| 峰山が堂々たる根張りを見せる。牧場の西の端で牧柵に沿って北上するとや |
| がてまた案内板がある。ここで牧場と別れ、西沢に降りていく。いったん支 |
| 流を橋で渡って登り返すと、道が三方向に分かれる。ひとつはまきば公園に |
| 向かう。天女山へはあとのふたつのどちらかを選ぶ。中止の滝を経由するか |
| しないかの違いだけで、あとで合流する。上流をまわって沢を橋で渡る、か |
| つては車が通ったのであろう道を行くほうが、沢への登降のない分楽ではあ |
| る。そうすると滝の見物は中止となる。 どちらにしろ中止の滝だ。道が再び |
| 合流したところで県道に出る。北上すると八ヶ岳高原ラインと交差する。そ |
| のまま直進して、車道から左に分かれる遊歩道を20分程で天女山である。 |
| 車道が整備されて、めっきり多くなった観光客に恐れをなし、天女様はとっ |
| くにどこかへ逃げ去って、 今ではほんの稀にしか姿を現さないという。あと |
| 一五分登って、天の河原まで行ったほうが静けさも展望も一段と優れている。 |
| ひょっとして、その辺までは天女様も降りてきているかもしれない。 |
●天女山−甲斐大泉駅(1時間5分→←1時間20分) |
中止の滝入口までは往路を戻る。滝入口を過ぎ、なおも県道をそのままだ |
| らだら下り、小海線を陸橋で渡ると右に駅が見えている。 |
●コースタイム |
小海線清里駅(45分→←50分)吐竜の滝(25分→←20分)八ヶ岳牧場(1 |
| 時間45分→←1時間30分)天女山(1時間5分→←1時間20分)甲斐大泉駅 |