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       浜立尾根から滝子山 2013.5.16



飼っていた犬、クリオが死んだ翌日、山と溪谷社の雑誌『ワンダーフォーゲル』の仕事で滝子山に登ることになっていた。後にも先にもそれ一回きりのモデルとしての仕事であった。2011年10月のことである。

早朝、庭に掘った穴にクリオを埋葬してから家を出た。その慌ただしさで少し気がまぎれたのはよかったと思う。家にいたら滅入っていたかもしれない。

クリオとはいったい何度山に行ったか数えきれない。放したとたんに山の中に消え去り、ときどきどこからともなく戻ってきてこちらの様子を伺ってからまた消えるといったことがほとんどだった。その日の滝子山では、山道の曲がり角の先に、息せき切って戻ってきたクリオが待っているような気が何度もした。ひょっとしたら本当にいたのかもしれないと思う。

(2018.12) 

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