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          鳥ノ胸山 2007.3.1



鳥ノ胸山は「トンノムネヤマ」と読む。語源は「トノムレ」で、その詳細は長くなるから略すが、同じく「ムレ」とつく山名はこのあたりに多い。要するに鳥の胸とはまるで関係ないのだが、山容がかわいい双耳峰をなしているので、鳥の胸と当て字されたら、なるほど見た目どおりだと思わせるところがある。通ぶって「トンノムネ」と発音してみても、もう「トリノムネ」が流通している呼称だと思う。

この山にはかつて業務用に使う山椒の新芽をよく摘みにきていた。麓のキャンプ場に林間学校に来た学校やボーイスカウトが野外活動の一環として登っていた山だから、古くから整備された径はあったが、登山者にそれほど知られている山ではなかった。まだ山梨百名山に選ばれる前の話である。

私にとっては10年ぶりだった。登山口のキャンプ場への道路沿いには別荘のような家々が随分増えていた。登山道に入ると、かつてはいくらでもあった山椒の木がまるで見当たらない。植林の檜が高くなって、日ざしがまったくなくなってしまったからだろう。10年というのは決して短い時間でもないと思わされた。

頂稜の自然林がすばらしい。枝越しに真っ白い春の富士を望み、御正体山の右手ににせりあがってくる三ッ峠の彼方には白い南アルプスが並んでいた。木が刈られて広くなった頂上で実にのんびりと過ごしたのは写真で見るとおり。

麓の道志川ではやけに釣竿を持った人に出会ったが、県内各地で渓流釣りの解禁日だったのである。なるほど「水ぬるむ春」の言葉がぴったりする、早春の、のんびりした山歩きであった。

(2015.2)  木曜山行報告へ

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