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板橋川左岸尾根(柳沢峠)
これ以上ないような快晴となった。柳沢峠へ登る途中、車窓からは新雪の富士山が絵のように眺められた。
尾根の末端から取り付くとすぐに防火線が始まる。斉木林道に合するまでの標高差400mを、ミズナラやハルニレの大木を愛で、徐々に拡がる展望を楽しみ、しかも秋たけなわの色に歓声をあげ、秋の冷涼な気候にまるで汗すらかかないまま登った。
倉掛山へと続く稜線まで登って、一段と展望のいい防火線を北上するつもりだったが、時間切れと判断して斉木林道を歩いた。道標とてひとつもないが、水源林歩道を拾えば実にさまざまな歩き方のできる山域である。
下りにとった径は初めてだったが、予定どおりどんぴしゃりに駐車場所に戻った。径の状態も最上で、足に何らの負担もないまま下るともなく下れるのはその柔らかい地面による。木曜山行では他の登山者に出会わないことはごく普通だが、昨日も我々5人だけの山となった。
参加者から早くも来年の新緑に歩こうとリクエストが出たが、さもありなん。気軽に何度でも楽しめる最高のハイキングコースである。
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栗屋峠山(谷戸・瑞牆山・若神子・茅ヶ岳)
栗屋峠山というのは三角点名から勝手に名づけた名前で、もともとこんな小山には名前などなかったろう。山の西側に峠道らしき痕跡があるので、おそらくそれを地元では栗屋峠と読んでいたのだろう。
小森川両岸は知られざる山の宝庫みたいなところで、以前も書いたが、地形図を4枚合わせないと概要をつかめないせいで見落とされがちな山域である。
笹やスズタケが繁茂していないのがこのあたりの山域の美点で、尾根らしい尾根はすべてさほどの苦労もなく歩けるのはありがたい。
今年の春にこのあたりを少し歩き回ったとき、これだけいい径があるものだろうかと思った。今は山仕事の人やハンター以外に歩く人もいないだろうに、古い径は残るものなのだろうか。歩く人もいないから当然ながら径はふかふかに柔かく、石もほとんどないので実にのんびりと歩ける。
おりしも黄葉の盛りといってよく、うっとりと歩いた。展望には恵まれないが、この上それはぜいたくというものであろう。
帰りがけの駄賃に比志の城山にも登って、須玉の秘峰、というよりは秘められた山道を堪能した。
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榊山(信濃田口)
榊山は信濃毎日新聞社発行の『信州ふるさと120山』というガイドブックで発見した山である。日本でもっとも海から遠い地点にある山だという。このガイドブックは春の大出山でも参考にしたが、その内容にはかなり疑問が残った。今回も同様で、有名な山ならいざしらず、この手の山の説明としては不充分であてにはできないと感じた。
ことに「子供やお年寄りでも気軽に訪れることができる」と書かれているのは疑問で、海からの最遠地点までならそうかもしれないが、そこから榊山までは近距離とはいえ今の状態では初心者のみでは危険に思う。
今年一番の冷え込みだった。前日は高山では雪で、周りの山々は真っ白である。木々の色が残っているときにこんなに雪が降ったのは私がこの地に来てから初めてのことである。佐久平に入ると浅間山もすっかり白くなっていた。
「子供お年寄りでも簡単」だというのでは面白くないので、登山口からさっそく尾根に取り付いた。それを登って榊山に達し、帰りはその何ら問題のない登山道を下るつもりだった。
地図から読んだ稜線は、伐採跡で歩きにくいところもあったが、そのおかげで浅間山がすっきり望める場所もあった。快調に榊山三角点に達して、陽だまりで昼休みとした。
さてここからは気軽に下れる径があるのだとその方向に歩き始めたが、広場といっていいらいに広くなった稜線のそこら中にピンクのテープが巻きつけられて、それが林業作業用の目印だとはわかるものの、その数たるや半端ではない。しかもあらゆる方向にぶら下がっているのである。赤や黄色のテープも木に巻きついており、何が何だかわからない。
ガイドブックから、まるで問題のない径が通じていると合点していた私は、油断して最遠地点がどの場所なのかをはっきりと確認していなかった(もっともガイドブックの簡易地図ではよくわからない)。
ともかく稜線は広く、目印は無数にある。最遠地点が稜線のどちら側かというのは間違えようがないが、それがどの沢の源頭だったかがわからない。そのうち、長野群馬県境が南に下るところを稜線通しに歩きやすいほうへ入ってしまった(これはあとでわかった)。もちろんその尾根にも多くの目印がぶら下がっている。
このあたりだろうと適当なところから沢に下ってみたが、藪が続くばかり、足元も悪くなってきたので尾根をまたいで南側の沢に下り、やっと最遠地点への歩道を見つけた。その間にもいたるところに目印がぶら下がっているのである。
結果的には歩道に出られたが、そこに至る道筋は私の大失敗で、方向を見定めていなかったのがその原因であった。それにしても、最遠地点からこのガイドブックで榊山を目指した場合、行きは問題なかろうが、帰りにはよほど注意をしていないと他の尾根に紛れ込む恐れがある。とにかくどの方向にも目印がある。霧でもあったらなおさら難しい。
現状では、ガイドブックには、最遠地点以降は山慣れた人向きくらいの記述はどうしても必要と思われる。この山の技術度は★ひとつで、ガイドブックの説明によると「里山ハイキング程度。登山道整備され難所等なし」となっているが完全な間違いである。
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小烏山(川浦)
小烏山はこれまで2回計画して2回とも流れてしまっていた。3度目の正直というわけだが、幸い好天となった。
大烏山は立派な山容だし、旧牧丘町で道標を立てたこともあって(この道標には疑問が残るが)、最近では入山者が増えたようだが、子分の小烏山は主稜から離れ、しかもその主稜がこの山より高いため、いかにも山らしい山容であるにもかかわらず認知されにくい。結果、年間に登る人はおそらく数えるほどだと思われる。
地形図を見ればわかるが、どう登ろうがすこぶる急登である。その急登の間には面白い造形の岩が無数にあるのがこの山の特徴である。その岩にびっしりとついた岩茸を採りながら登っていった。
よくこんな急斜面に植えたものだという植林帯を抜けると頂上は近かった。四方が急激に落ち込んだ、いかにも頂上らしい頂上だが展望はむろんない。
昼休みをして、さあ下ろうという時間になってもまだ午前中であった。下りにとったルートも岩が面白い。この岩塊斜面は地質学的にも貴重であることを読んだことがあるが本の名前を忘れてしまった。
山椒は小粒でもぴりりと辛い、そんな小烏山であった。
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