大堀山(石和)

毎年、桃の花期には御坂や一宮の山に登るのを恒例としている。しかしそれもあらかた登ってしまった。そこで、ほとんど最後に残ったともいえる、大栃山の北側の一角にある大堀山に登ることにした。

このあたりの小さな山は地形図に山名がないのが普通だが、この山はどういうわけか表記があって、ならば藪山党が見逃さないはずなのだが、あまりに山が小さいせいか、裏側にゴルフ場があるのがその気にさせないのか、登ったという話を聞いたことがない。

麓からの標高差は400m足らず、体調不良により戦列をしばらく離れていた方々が久しぶりに参加、そのリハビリ登山としては適度な標高差であった。

平地では桃の花盛りであったが、山際まで歩いていくと少し花の色が薄れる。金刀比羅神社のある山を越えると、くぼ地に金刀比羅教の廃屋が何軒か並んでいる。そこでは桜が満開で、実に平和に感じられた。

麓からはちっぽけな山にしか見えないが、藪尾根を急登すると人里ははるか眼下で、いっぱしのお山の大将気分である。盆地が桃色に染まっている。

地図上の大堀山にたどり着くと、すぐ下にゴルフ場があって少々興ざめだが、しかし、なかなかうまいところにゴルフ場を造ったものだとも感心する。この山があることで世間から隔絶された雰囲気となり、ゴルファーにとっては、気分のよいコースなのではないだろうか。

三角点へ行くとなおコースが近くなって、すぐ下で「ナイスショット」をやっていた。山の上からの人声がむこうにも聞こえたかもしれない。なにせ、こちらはワインをあけて、長い時間騒いでいたのだから。

帰りはゴルフ場の淵を歩き、地形図の破線をそのまま下ったが、久しく人が歩いたような形跡はなかった。その分、目障りな赤テープの類も皆無で、ちょっとした道探しも楽しめたのであった。

荒船不動〜兜岩山(信濃田口・荒船山)

以前悪天で中止にしてしまった兜岩山だったが、今回もはかばかしくない予報であった。それでも雨ではなさそうである。

雨は降っていないものの、小雪舞う朝であった。気温も低く、とても4月半ばとも思えない。清里方面から下ってくる車には雪を積んだ車もいる。

佐久から内山峠へ向かう道は荒船山に登るときなどに何度も通った道だが、荒船山は信州側からはさほど目立つ山ではなく、よほど目立つのは兜岩山の岩峰である。名前から想像できるそのままの姿で突兀と盛り上がっている。

上信国境の山々は真っ白だった。雪に加えて、この冷え込みに霧氷がついたらしい。荒船不動から星尾峠への道を歩き出せば、上に行くほど白さが増して、夢幻の国を彷徨うがごとくである。寒いことは寒いが、春にこの景色は得がたい。その美しさに歓声がしきりだった。

数年前の水害で荒れてしまった峠道はまだ修復がされておらず、えぐられた沢を何度か通過することもあった。荒船不動から兜岩山への近道も通行止めである。昨日も佐久市役所から調査の人間が入っていた。

星尾峠から兜岩山までの尾根道には御岳山を越える上下があって、なかなかきつい。気温はさらに下がるばかり、風も出て雪も再び舞う。ろうそく岩の北側を巻くトラバースで残雪が凍っていた。もう頂上まで20分とはかからないだろうが、いさぎよくそこで撤退することにした。

御岳山へ戻って小雪の舞う中で昼食とした。枝からは霧氷が落ちてきて、皆、頭を白くしての昼休みであった。この樹林の良さなら、新緑紅葉もさぞやと、再訪を誓った。

荒船不動への下り道は、朝方の霧氷もあらかた消え、まるで違う道を歩いているかのようだった。

斑山(谷戸・若神子)

予報どおりに雨が降り出した。地元の山の気安さで、車の中でしばし待機。そしてこれも予報どおりに空が明るくなってきた。

津金の山はミツバツツジの山である。4年前に全山を覆った紫を見てから、毎年のようにこの時期に歩くのだが、あいにくそれほどの花は咲かず、去年に至ってはほとんど皆無というありさまだった。

今年はどうだろうかと、斑山に登ってみることにした。しかしこの春の不順な天候に、今年は咲こうと身構えていたツツジも出鼻をくじかれたというところか、半分咲いたところでしぼんだような花が多かった。しかし、道中ほとんど途切れることなく淡い紫を楽しみながら山歩きはできたのであった。

馬場峠を出ると、湿り気をおびた大気に新緑が瑞々しい。気分のよい稜線歩きをしているうちには雲がとれ、八ヶ岳も姿を現した。頂上に着くころには陽がさんさんと降り注ぎ、弁当をつかうのに今度は日陰を探す始末であった。

GWの始まった日、こんな山でも誰か歩いている人がいるかと思ったが、結局終始誰ひとりに会うこともなかった。きっと人の多い山はさらにすさまじい人出であろうに。

五里山(瑞牆山)

3年前の3月の木曜山行で登った五里山は、本来登るつもりの入り口を行き過ぎてしまい、急な尾根を登りつめ、なんとか登頂したものだった。しかし時期が少々早すぎて北向きの地面が凍っていて下り道を変更、南側の、より穏やかな傾斜の方向へ下ったのはよかったが、途中に予期せぬ堰堤の高巻きが2回あって、かなりの苦労を強いられた。下山後はゴリ山はもうコリゴリ山だという感想も出たのであった。

今回はさすがにもう地面もゆるんだであろう5月を選んだ。落合に車を停め、五里山をぐるり一周しようという算段である。連休中の好天が引き続き、歩いていると暑いくらいの陽気であった。

連休中には少しは人も入ったかと思ったが、そんな形跡はない。緩い沢をさかのぼるが、葉が茂ると先が見えなくなるような場所もある。

向山と五里山の鞍部への目印を見つけて踏跡を追うが、これが短いながらかなりの急登。しかしこの山に登るにはこれでも急ではないほうなのである。

鞍部から向山を空身で往復する。これも短いが実に急である。木につかまるように登って降りて五里山へ向かった。3年前にははっきりしていた踏跡がまったくといっていいほど消えている。それだけ崩れやすい山肌ということになる。普通の登山道の倍は足が疲れるといっていいだろう。

五里山頂上は何人もで休めるようなところではないので、その手前で昼休みとした。枝越しに大日岩から金峰山にかけての稜線が間近に迫る。

昼食を摂った場所からひと登りで五里山である。すぐ隣の岩峰がいくらか高いようだが、そちらは素手では無理である。

ここからは完全に獣道のようになる。鞍部へ下って思案した。この手の登降に慣れていない人が含まれているので、予定の稜線どおしに下るのは危険に感じたのである。そこで回り道となっても、枇杷窪沢沿いの林道へと下ることにした。

結局これが正解で、かえって時間は短くすんだかもしれない。車の通らない林道は実にのんびりしている。山桜が新緑に混じる美しさに感嘆しながら沢沿いの道を下り、最初の計画とは違ったが、無事五里山周遊を終えた。

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